「ジョジョ・ラビット」 デヴィッド・ボウイとフレンチトーストメソッド

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 この映画は一部で評判が芳しくない
 ホロコーストを扱うにはタッチが軽いと言うのだ。
 このテーマのコメディとしてはチャップリンの「独裁者」という鬼気迫る歴史的名作があるのも分が悪い。
 特に監督自身がヒットラーを演じているという致命的な共通点があり、どうしても比べられてしまう。
 そらアレと比べられたら不利だわ。

 もうひとつ、原作改変問題というのもある。
 例によってワタクシ禁煙さんは原作を読んでいないが、どうも、大幅に改変しているらしい。
 例えばヒットラーは登場しない。
 ジョジョの守護者、キャプテンKは登場しない。
 ジョジョは映画では10才だが原作では19才。
 もう、全然違うハナシじゃん、、、
 しかも原作はホロコーストを扱うのにふさわしい沈鬱なムードであり、ジョジョとヒロインの関係も最終的に悲惨なものらしい。
 原作と映画は別物だという認識に立てないヒトは、腹が立つかもしれない。
 なにしろ映画「ジョジョ・ラビット」はコメディだから。

 しかし、ワタクシ禁煙さんは正直言って感動してしまった。
 珍しくオジサン、涙ぐんじゃいました。

 第二次大戦末期のドイツ。
 主人公の少年ジョジョは10才にして既に熱狂的なナチスシンパ。
 やっとヒットラーユーゲントの合宿に参加できる歳になったので、喜び勇んで街行くヒトにいちいち「ハイル・ヒトラー!!」と呼びかけながら合宿所に向かうジョジョであった。
 合宿所で出会った大尉、通称キャプテンKは優秀な軍人だったが戦場で片目を失ったため、今はヒットラーユーゲントの教官になっている。
 今でも生徒たちに見せびらかすほどの射撃の腕の持ち主だが、実は生徒の前で堂々と「ドイツは負ける」などとのたまう危険人物でもある。

 しかしそのキャプテンKがうっかりしていたせいでジョジョは訓練中に大怪我を負ってしまい、ヒットラーユーゲントになるのを諦め、家に帰らざるを得なくなる。
 そして、療養中、母親が不在の時、家の中の隠し部屋にユダヤ人の少女が隠れているのを見つけてしまう、、、というハナシ。

 父親は出征して海外の戦線で戦っていることになっている。しかし母親はユダヤ人の少女を匿って、こっそり反ナチ運動に身を投じているらしい。
 この、スカーレット・ヨハンソン演じる母親がとっても魅力的。
 自分は反ナチ運動の活動家なのに息子はイマジナリーフレンドであるヒットラーの助言に従って行動するほどの熱狂的なヒットラー信者である。
 しかし彼女は息子の信念を頭ごなしに否定したりしない。
 息子の熱狂を暖かく見守っている。
 美しく(まあ、スカーレット・ヨハンソンだからコレは当然そうなる)、優しく、賢く、強い。
 正直、ツラいほど理想の母親であり、ツラいほど理想の女性なのだ。

 この映画は語られてない部分が多い。
 キャプテンKがナチスの将校でありながら既にドイツを見限っていることはセリフの端々で描かれているが、彼はいつも同じ下士官を連れていて、セリフその他で明瞭に描かれることはないが、ゲイである。おそらくはゲイであることから、ドイツに対して批判的であり、ジョジョに対する行動にも、ゲイらしい気遣いが感じられる。

 そして、どういう関係なのかは描かれていないが、キャプテンKとジョジョの母親は古くからの知り合いである。
 合宿中にジョジョが大怪我を負ったとき、現場責任者であるキャプテンKは「こいつの母親に殺されるな、、、」と慨嘆する。
 さらに結局ユーゲントをクビになったジョジョのために母親がユーゲントの事務所に乗り込んだ際、母親はいきなりキャプテンKにキン蹴りを食らわせる。そしてキャプテンKは苦悶のあまり倒れ込みながらジョジョに仕事を世話する。
 いくら息子が怪我をした責任者といえどナチスの将校にキン蹴り食らわせてお咎めなしはやはりもともと知り合いだったとしか思えない。
 もしかすると彼女の夫とキャプテンKは同級生で、彼女とキャプテンKは同じ男を愛した恋敵だったのかも知れない。

 そしてジョジョの家族にも謎がある。
 既に亡くなっていて画面には登場しないもののストーリーの重要なキーになっている、ジョジョの姉インゲである。彼女はなぜ亡くなったのだろう。確かにストーリー上の必然性はあるのだが。
 さらにジョジョの父親は海外を転戦していることになっているが、コレもよく分からない。ほとんど描かれないのだ。妻が反ナチス運動をしている以上、夫も実は地下に潜っているのを「戦争に行っている」と嘘をついているのではないか。

 そしてこれらは、どうも原作には出てこない要素にばかり絡んでいる。
 ココまで来ると、なぜ原作付きにしたのかわからないレベルではないか。
 もう、オリジナルストーリーってことにして好きにやればいいのに。

 主人公のジョジョは子供なのでまあ、いいとして、ちゃんとセリフのある主要登場人物、ジョジョの母親、キャプテンK、ユダヤ人少女のエルサ、及びジョジョの親友オーキーまで含めて全員映画史上に残るような素晴らしい人間性の持ち主として造形されている。
 特にキャプテンKの屈折と優しさは最後まで泣かせる。
 サム・ロックウェルってカッコイイなぁ、、、

 そしてエルサ。
 エルサとジョジョがダンスをするシーンで、ワタクシ禁煙さんはマジで涙ぐんでしまった。
 コレが映画史上に残る名シーンかどうかはわからないが、ワタクシ禁煙さんの心にはいつまでも残りそう、、、

 ところでこの映画、ラストでデヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」が流れる。


 全然関係ないが、「クリミナル・マインド」の最終回、ラストのパーティーのシーンで「ヒーローズ」が流れていた。
 「ヒーローズ」は苦難を乗り越えたヒトビトのアンセムとして定着しているのだろうか。
 それとも「ヒーローズ」はデヴィッド・ボウイによる「ベルリン三部作」の一枚なので流れているだけだろうか。


 最後にもうひとつ。
 ジョジョは最初「靴紐も結べない少年」として登場してくる。
 しかし、映画のラストでは結べるようになっている。
 こういう、

「映画の最初でできなかったことが出来るようになっている」メソッド

にそろそろ名前をつけたい。
 このメソッドを日本人が始めて観たのは「クレイマー・クレイマー」のフレンチトーストだったろうか。
じゃあ、「クレイマーメソッド」かな?イヤ「フレンチトーストメソッド」の方がいいかな。

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