「鬼談百景」 毎度おなじみ面白くはあるが怖くないホラー

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 コレはどうも「残穢 -住んではいけない部屋-」の関連作品らしい。
 小野不由美による百物語の試み、小説「鬼談百景」の百話目が「残穢 -住んではいけない部屋-」であり、映画「鬼談百景」は1~99話の中から10話選んで映像化した、という構造になっている。

 スタッフも「残穢」の中村義洋・鈴木謙一コンビに続いてほん呪人脈が多い、
 オープニングの1話が中村義洋監督、ラストの1話が「ほんとにあった呪いのビデオ Version X」の白石晃士(ワタクシ禁煙さんにとっては「ノロイ」のと言ってもいいが)、そして6・7話はなんと「ほん呪」の42~55巻と長きに渡ってシリーズを支えた岩澤宏樹。「ほん呪」から離れても恩師中村義洋への恩義は忘れてないらしい。
 2・3話は「呪怨 黒い少女」の安里麻里。
 4・5話の大畑創と8・9話の内藤瑛亮はよく(全然)知らない。
 基本的にそのエピソードの監督が脚本も書いているっぽいが、一部の脚本に鈴木謙一。
 全体のナレーションに「残穢」の竹内結子。
 各エピソードは竹内結子による
「こんな手紙が来た、、、」
というナレーションで始まる。

 そして、全10話もあるので大勢の役者さんが出演しているが、顔と名前が一致したのは2話の根岸季衣さんだけだった。
 要はスタッフ・キャストともに新人さんに活躍の場を与えるために、売れっ子の中村義洋監督や根岸季衣さんが協力してくれた、という構図なのだろう。

 なんとなく、「ほん呪」繋がりが強いので、「ほん呪」みたいに1話ずつ言及してみたい。

「追い越し」 中村義洋
 中村義洋でスタートダッシュ、という思惑だと思うが、全編通してコレが一番つまらない。
 おそらく導入部なのでベタなネタで、ということだろうが、「心霊スポット巡り」「トンネル」「深夜の山道」「白い服の女」 と、もう、ベタすぎて興味が持たない。ちょっと導入部ということを意識しすぎではないか。

「影男」 安里麻里
 二人の孫をシングルマザーである娘から預かった根岸季衣。二人を昼寝で寝かしつけているうちに自分も眠ってしまう。やがて窓をガンガン叩く音で目を覚まし、不審に思って見に行くとそこに居たのは、、、というハナシ。
 やがて帰ってきた娘も巻き込むが、このハナシのテーマは

「シングルマザーの抱える不安、心細さ」

 になっている。安里麻里監督が気がついているかどうかわからないが。そういう意味ではよく伝わってくる。

「尾けてくる」
 女子高生の雨の帰宅路、部活仲間と別れた主人公が公園で首吊死体を見てしまうが、その後、、、というハナシ。
 「シングルマザーの不安」に続いて今度は

「女子高生が大人の男性に感じる不安と不気味さ」

だろう。
 ひっつめ髪の女子高生(久保田紗友)の凛とした可憐さと相俟って、コレもよく表現できている。

 が、ここまで観てきて思ったんですけど、安里麻里監督が表現したかったことは表現できているが、怖くは無いなぁと思う。ホラー作品の多い(というかほぼホラーばかり)安里監督だが、意外に恐怖に興味がないのかもしれない。

 関係ないけどGoogle日本語入力は「つける」で「尾ける」が変換できない。だっさ、、、

「一緒に見ていた」 大畑 創
 主人公は高校の先生。「雑に抱いた女(by大悟)」に構内で首吊り自殺されてしまう。知り合いじゃないふりをして大騒ぎする周りの教師たちを手伝うが、校内に死んだはずの女の影が、、、
 このエピソードはなんか脚本がバタバタしてる印象。主人公の先生、「雑に抱かれた女」ともにナニがしたいのか、どう思ってるのかよく解らない。

「赤い女」
 コレは面白い。
 ある高校で流行っている「赤い女」の噂。
 「赤い女」が見えている者は誰かこの噂を知らない者にこの噂を伝えると、自分の前からは消えて伝えた相手に見える様になる、という。

 冒頭、件の高校で、噂もクソもみんなその「赤い女」が見えているにも関わらず、あえて言及しない、という描写が素晴らしい。もう、「赤い女」の噂が飽和しているのだ。
 最初事情を知らないで見ているとすげーモヤモヤする。
 やがてこの高校から、1人の女生徒が、この噂を知るものとてない高校に転校して、、、というハナシ。
 ここからのサスペンスもなかなか良い。
 このエピソードも徐々にテーマは「人間の邪悪さ」にシフトしていく。
 ラストに自らかけた縛りを急に捨ててしまうのが残念。

「空きチャンネル」 岩澤宏樹
 空きチャンネルから謎に聞こえてくる謎の女の身の上バナシに取り憑かれてしまう男子高校生のハナシ。
 のめり込んでしまい抜け出せず、ドロドロになっていくオトコのコの焦燥感は伝わるが、あまりヴィジュアル的に映えるハナシではないので、岩澤宏樹がなぜこのハナシを選んだのかな、、、と思う。
 一応99話ある内から各監督が自分で選らんだような体裁になっているが、そうでもないのかな、、、

「どこの子」  岩澤宏樹
 コレも「出る」ことが当たり前になっている中学校のハナシ。
 新任教師が先輩教師と二人、深夜残業をしていると、先輩教師が「いろいろあるからキミも早く帰りな」と言い残して先に帰ってゆく。
 で、深夜の校舎に不気味な子供が出ます。
 「この子供を見るのは、、、何故か教師に限られているそうです」というナレーションが、背景を感じさせて一番怖い。

 岩澤宏樹監督作品には期待していたが、演出力以前にエピソードがピンとこなかったのが残念。

「続きをしよう」 内藤瑛亮
 コレも面白い。
 ただ、心霊モノ、というよりいわゆる「奇妙な味」に近いかも。
 墓地で遊び始めた8人の小学生たち。
 ひとりが倒れた墓石の下敷きになって怪我をする。
 ギリギリひとりで歩いて帰れる程度の怪我、というのが味噌。
 怪我をした子が「もう帰る、、、」と言って帰ってしまい、残った7人が顔を見合わせていると、どこからか、
「続きをしよう、、、」
という声が聞こえると、彼らは一も二もなく遊びを続けるのであった、、、
 そうやって、ひとり、またひとりと減っていくのだが、人数が減っていくとよく分かる、「続きをしよう、、、」という声が聞こえる時、彼らの誰も口を開いていないのだ。
 では誰が「続きをしよう、、、」と言っているのか、このまま人数が減っていくとどうなるのか、声の主の正体は明らかになるのか、、、

「どろぼう」
 コレも心霊ものと言うよりは「心に怖いのは人間だ」系のハナシ。

 「集落の中でイヤな噂が流れた、、、子沢山の奥さんの様子がおかしい、というのだ、、、」
というナレーションでほぼ全てが表現されているような気もする。
 集落、という単語が表すように、隣の家に回覧板を持っていくのに自転車に乗るほどの田舎。
 そして、まだ若くて美しいのに既に5人ほどの子供がいる隣家の奥さんは、またお腹が大きい。主人公の女子高生が母親(と弟)と回覧板を届けに来た時、母親が「おめでた?」と聞くと、「太っただけよ~」と答える。顔は全然痩せてるのに、、、

 具体的に霊的な存在が登場するが、怖いのはそこじゃない、、、というハナシ。
 視点人物の女子高生役、萩原みのりちゃんとベテラン小橋めぐみの演技対決としても観れる。

「密閉」 白石晃士
 コレもフツーの短編映画として面白い。
 ヒリヒリとしたサスペンスのあとにキレーにオチがついて皮肉な後味。
 恐怖よりも技術で観せたな、という感じ。
 やっぱり白石晃士監督は巧いな、と思う。

 実はこの作品が映像化されたのは2016年である。
 ここ数年感じていた

「最近のJホラーは恐怖を目的としてないな、、、」

という傾向が、この頃から既に始まっていたのだな、気付かされる。
 
 実は本作の関連作である「残穢」には、ワタクシさんはひんやりとした恐怖を感じていた。
 ところが本作になると急に恐怖を諦めているのは、短編だからなのか、「残穢」の方がひょっとすると時代遅れですらあるのか、よく解らない。
 恐らくホラー業界では、

「怖がらせ続けるって、もう無理じゃね」
「つか、メンド臭いからもう古いってことにしてヤメてかね?」

って事になりつつあるのではないか。

 このような状況が続けば、また、この閉塞状況をぶち破る原理主義者が登場するのは世の常である。
 それは、恐らくは今、メジャーシーンには登場してないヒトの手によるものだろうな、と思うワタクシ禁煙さんであった。

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