
すでに旧聞に属するが、韓国映画がアカデミー賞を獲ったのである。
コレはどういうことかと言うと、今、映画というものに真剣に向き合っている国民は、アメリカの次は韓国国民である、ということだ。
少なくとも、日本よりは(日本はアニメには真剣に向き合っているが)。
そして、本作「V.I.P. 修羅の獣たち」など観ると、いよいよ韓国映画が、とりわけそのアクチュアルな問題意識を物語化し、またそれをそれぞれの役者が演じきる、という意味において、日本映画などでは及びもつかないレベルに達していることを思い知らされるのであった(って、コレはしょっちゅう同じこと言ってる気がするが)。
北朝鮮に連続殺人鬼がいる、というのである。
もう、少女を暴行した上に絞め殺して、なぜか家族まで皆殺している。
そしてそんなことをしょっちゅうやっている。
北朝鮮にも警察(っぽい?)組織がいて、刑事(っぽい?)仕事をしているヒトがいる。
そしてその刑事(っぽい?)ヒトにも真面目なヒトがいる。
しかしこの刑事(っぽい?)ヒトは必死で連続殺人鬼を捕まえようとするが、上層部に邪魔されるどころか抵抗したばっかりに部下とともに左遷されてしまう。
なぜならこの連続殺人鬼、なんと北朝鮮の高官の息子なのであ~る!
というハナシ。
数年後、韓国で似たような連続殺人が起こる。
そう、あの殺人鬼は韓国に来ているのだ。
韓国でも強引さがたたって謹慎中のはみ出しデカが必死で殺人鬼を追うが、ココでも邪魔が入る。
殺人鬼は高官のオヤジの失脚によって韓国へ亡命し、オヤジが管理していた中国の銀行にある北朝鮮の口座番号を知っている、ということで、なんと、CIAと韓国情報部の保護下にあるのであ~る、と言うハナシ。
殺人鬼逮捕に執念を燃やすはみ出しデカと殺人鬼を保護しなければならない情報部員、そして北朝鮮からおってきた刑事(っぽい?)オトコまで絡んで、この三者で殺人鬼をめぐり激しく葛藤する。
この三人の人物造形が素晴らしい。
ほとんどネ暗なまでにマジメな北朝鮮の刑事(っぽい?)。やはり北朝鮮の人民はネ暗にならざるを得ないんだろうな、と言うリアリティがある。
そして韓国のはみ出しデカ。
このオトコの強烈な悪に対する憎悪と執念、そして巨悪を懲らすためなら自ら悪にも染まることすら(捜査のためなら不正もする)辞さない強引なオトコ。
類型といえば類型では有るのだが、役者さん(キム・ミョンミンさん)の演技がハマっててい、これだけで一本の映画になるくらい。
韓国情報部のエージェントになんと、チャン・ドンゴン。
情報部員として殺人鬼を守らなければならない立場と殺人鬼に対する嫌悪で揺れ動く彼の葛藤が、この映画をまとめている。
しかしですね、殺人鬼をめぐるこの三人の男たちのそれぞれの役割分担と演技力がこの映画を深いものにしているのは間違いなんですが、実はもうひとり、この三人以上にこの映画を先鋭的にしている人物がいる。
殺人鬼を演じる、イ・ジョンソクである。
ココにこの美しい少年(当時27ですが、美しすぎて美少年としか言いようがない)をもって来た度胸には恐れ入る。
正直、衝撃的なほどの美少年で、「まさかこの子が、、、」というほどなのだ。
日本で言えば千葉雄大が女子中学生をさんざっぱら陵辱した挙げ句惨殺しまくる役をやるだろうか。
まあ、藤原竜也ならやるだろうけど。
しかもはみ出しデカや情報部員に対する時の憎々しさ。
この映画が今後の自分のキャリアに悪影響を与えるんじゃないか、ファンが減るんじゃないか、二度とイイ人の役は来なくなるんじゃないか、などという不安は完全にふっ切って、この映画のみをいい映画にすることだけを考えている。
こういうところにその国の映画界全体の「映画という芸術に対する本気」を感じてしまう。
アクチュアルな国際政治とサイコホラーとオトコの生き様という、それぞれ一本の映画になり得る要素をスピーディに、しかも微塵も乱れることなくまとめた脚本のテクニシャンぶり(特に、オープニングにクライマックス直前を持ってくるカットバックは素晴らしい)、韓国で大問題になったほどの容赦ない惨殺するシーンに代表される妥協のない演出力(アクションシーンもシャープ!!)、そして大胆なキャスティングと演技力。
もう、どれをとっても日本映画はかなわないな、、、と思わざるを得ないのであった、、、



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