「恐怖」 脚本家が映画を撮るとこうなるのか、、、

 その(「劇場霊」や「貞子」参照)、高橋洋氏の珍しい監督作品。

 冒頭、二人の中年の男女が古いフィルムを観ているシーンから始まる。
 戦前の満州で外国人を使って行われた脳実験の記憶フィルム。
 この時点で頭蓋骨開いて脳みそ丸出し。
 ああ、これからヤヴァい映画が始まるぞ、、、という期待に満ちたオープニングではないか。

 被験者たちが脳に何かを埋め込まれると、画面に変化が起きる。
 どうも脳に細工をされた被験者たちに見えているものが、画面に写ってしまっているらしい。
 フィルムを観ていた男女は「やっぱり、、、」と納得顔。
 その時、幼い少女が二人、寝室から出てきて、映写室に入ってくる。そしてそれに気づいた男女のうちの女性が慌てて駆け寄り、少女たちを庇う。まあ、男女二人は夫婦で少女は二人の娘なのだ。

 コレはつまり、いわゆる「脳の10パーセント神話」に関する映画であり、恐らくはリュック・ベッソンの「LUCY/ルーシー」の元ネタなのではないか。
 脳の現在使われていない90パーセントを覚醒させれば、知能や知覚が爆発的に上がる、というのは分かるが、外界にまで影響を及ぼす、まで行くと、そこには通常超えられない飛躍がある。
 「LUCY/ルーシー」がここを軽々と超えているのは、本作があるからではないか。
 ちなみに「恐怖」は2010年作、「LUCY/ルーシー」は2014年作。
 リュック・ベッソンは親日家だし、ないハナシでもないねぇ、、、

 十数年後、映画は突然当時流行っていた(今でもある?)集団練炭自殺の風景を描き出す。
 駅前で集合して、バンに乗り込み、山の中の草地で停め、確認をし、目張りをする。
 予想される通りの集団練炭自殺のプロシージャが繰り広げられる。
 しかしこの後、ハナシはどんどん意外な方向に展開する。もう、「どんどん」過ぎてこちらの予想をアレよアレよと超えていく。
 この辺の怒涛のしかも恐ろしい展開はさすが高橋洋、ゾックゾクします。

 冒頭で満州で撮られたフィルムを見ていた夫婦は脳外科医で、妻の方は実際に「脳に直接刺激を与えて限界を超える」を続けているのである。
 この狂気の女医がなんと片平なぎさ。
 よく出てくれたなぁ、、、
 「スチュワーデス物語」で両腕(!!)義手でドジなノロマな亀を脅しまくって以来の強烈な悪女ぶり。
 なにしろ無辜のタミビトを拉致しては勝手に頭蓋骨開けて脳みそ丸出しにしちゃあなんか埋め込んでいるオバハンである。たとえそれが自分の娘であろうとも(なにしろキャッチコピーが「お母さん、私の脳みそをどうするの?」なので、ネタバレにはならんだろう)。
 つかそんなに脳が覚醒すると何が起きるのか、何が見えるのか知りたかったら、自分の脳で試してみれば早いのに、、、

 ココから脳が覚醒しかけている娘は母のもとを逃げ出し、母と妹がそれを追う、という展開になるが、、、

 結局このハナシは「脳が覚醒すると何が起きるのか」「脳が覚醒した人間には何が見えるのか」をテーマに進むわけですが、コレがよくわからないのね。
 そもそも片平なぎさは一体全体どうなると思ってひと様の脳みそを覚醒させたいのか。
 彼女自身はどうなる、なにが見えると思っているのか。
 しきりと「自分自身が見える」とか言っているが、自分自身が見たいんだったら鏡で良くね?

 その辺がなにもわからないまま、何やらいろいろなことが起こるのだが、コレってイマイチ恐怖に結びつかなくね?という感じ。
「こうなったらヤヴァい」
という着地点、というか破局点が見えないので、ドキドキしようがない。

 ラストでアッと驚く展開が待っている。
 コレもイロイロ解釈のしようがあり、高橋洋監督自身は「パラレルワールド」と言っているが、コレは時間を巻き戻した、ということだろう。と、思うえるのも先に「LUCY/ルーシー」を観ているからかも知れないが。

 姉役に中村ゆり。前半のふつーに可愛い感じから後半の不気味さの落差が素晴らしい。素晴らしすぎて最初同一人物は思えないレベル。
 妹役には藤井美菜。キレイだし別にヘタではないが、特に印象も残さない。
 刑事役に高橋長英。この時点でもう70近くね?と思うが、さすがに映画のラストをビシッと締めている。

 多分、高橋監督の頭の中には、何が起きるのか、見えているのだろう。 
 しかし、観客には伝わらない。
 それが高橋監督の映像センスのなかなのか、脚本家というものは映画の完成形が観客にどう観られるのか予想できないからなのか分からない。
 出来れば、今後は誰かいい監督と組んで欲しいな、とは思いました。

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