「貞子」 中田秀夫問題について考える。

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 中田秀夫がなぜまだホラー映画を撮れるのか分からない。
 世間は(映画界は)「クロユリ団地」「劇場霊」に納得しているんだろうか。

 中田秀夫は確かに初期の3作、「女優霊」、「リング」と「仄暗い水の底から」で今にもつながる「Jホラー」の礎を築いた。
 しかしここ数年の中田秀夫は自ら過去の栄光をひとつひとつ丁寧に否定しているようである。

 「クロユリ団地」で「仄暗い水の底から」を。
 「劇場霊」で「女優霊」を。

 そしてとうとう、本作「貞子」で「リング」の栄光さえ無にしようとしているようである。

 何度も書くが「女優霊」と「リング」は高橋洋脚本であり、「仄暗い水の底から」は「リング」の鈴木光司が原作であり、「ほん呪」の中村義洋、鈴木謙一の脚本である。
 コレはしっかりしたストーリーと脚本があればいい映画になる、ということであり、「クロユリ」「劇場」「貞子」はストーリーと脚本がしっかりしていない、ということでもある。
 だったら監督のせいじゃなくて脚本のせいじゃねーか、ということになりかねないが、さにあらず。映画監督というものは、「この脚本で面白い映画になるかどうか」の判断もできなければいけないのよ。
 そしてそろそろ世間は(映画界は)中田秀夫にはそういう事ができない、その脚本で映画を撮って面白くなるかどうか判断ができない監督である、という認識に立ってもいいのではないか。

 そして、「クロユリ」「劇場」「貞子」の3作には共通の欠点がある。

 前半のアイデアは素晴らしく、思わず「おおお?」と身を乗り出すが、後半どうしていいか分からなくなってグダグダになる。

 コレである。

 「クロユリ」は要するに前田のあっちゃんの家族の秘密が明らかになるまでであって、それ以降は「仄暗い水」の劣化コピーに過ぎない。

 「劇場」も前半の「主演女優が舞台を降りて新人から代役を選ぶ葛藤」というのは、もともとバックステージものがやりたいという中田監督の資質と相まってなかなかの見応えなのだが、後半のお笑いモンスター・パニックが全てを破壊してしまう。

 そして「貞子」である。

 実は、「貞子」も前半、弟がYoutubeに上げた画像を池田エライザちゃんが見るあたりまでは結構ハラハラする。
 放浪していて病院に保護された幼女のカウンセリングをする池田エライザちゃんの弟(ユーチューバー)が、次のロケ先にとして目をつけたのが火事になった少女の家、という
 しかし、「リング」でも行った貞子の故郷、大島に舞台が移ってからのグダグダさ加減はただ事ではない。
 「リング」にあった7日間以内に謎を解かなければ死ぬ、というシバリがないせいもあるだろうが、なんの緊張感もない、謎解きの興味もないダラダラした展開のあげくに貞子さんが臆面もなく大登場して、呪いじゃなくて力技でヒトを引っ張る、という、「え?貞子ってそういうことだっけ?」状態。そもそも配役の時点で、

 松嶋菜々子→池田エライザ
 真田広之→塚本高史

 という時点で感じさせる差を大きく上回るガッカリさ加減ではある。

 要するに、3作とも「ああ、コレで映画になるかな、、、」というだけの内実は無いことは無いのだが、結局それだけでは前半しか持たず、後半どうしていいか分からなくてグダグダとどうでも良い展開を繰り延べてしまっている。

 この、「後半どうしていいか分からない」問題は、日本映画界の宿痾のようなもので、結局は脚本を読む力のあるプローデューサーがいない、というプロデュースワークの問題でもある。
 要するに、話題性だけで企画が通ってしまうのだ。

 「クロユリ団地」=「リング」の中田秀夫+前田のあっちゃん
 「劇場霊」=「リング」の中田秀夫+ぱるる+「女優霊」の残滓

 これだけで出来や評判はともかく採算は取れたのかも知れない。

 いい映画を作りたいとか。
 名作と呼ばれるような映画を作りたいとか。
 この一本で映画の歴史を変えてやるとか。
 いつまでも観られる映画を作りたいとか。
 ヒトを感動させたいとか。

 もう、どうでもいい。
 採算さえ取れれば。

 そういうことだろう。

 初期3作や「クロユリ」以降でも演出力は認められているのだから、ちゃんとしたストーリー、ちゃんとした脚本があれば、「女優霊」や「リング」級の傑作になる可能性はあるのに、もう、そうはしないのである。
 今回、実は原作が「リング」シリーズの最新作「タイド」、ということになっているのだが、あえて完全に無視して全然別のストーリーにしている。
 もう、なにもかもがどうでもよくて、ただ現代的なYoutubeとかの要素を入れて「リング」のリメイクっぽくしたいだけ。

 そう、「貞子がYoutubeに映ったら」と「リング」「リング2」を生き延びた佐藤仁美が演じたキャラを20年後にもう一度出す、というアイデアがやりたかっただけなのだ。しかも「貞子がYoutubeに出たら」というアイデアは、ホントに「出たら」というだけで別にその後どーにもならない。「リング」の「呪いのビデオ」ってそういう設定だっけ?見たら死ぬんじゃなかったっけ?

 池田エライザちゃんの大きな目を利用したショットはたしかに印象的で良い。
 もう、ホントそれだけ。
 ラストも訳解んないし。

 頼むから中田秀夫にちゃんとした脚本で映画撮らせてほしい。
 ちゃんと脚本が読めるプロデューサーを育ててほしい。

 まあ、ワタクシ禁煙さんみたいのが中田秀夫だからってだけで観ちゃうのが一番イケないのかな、、、
 だって、夏はホラーがみたいんだもん、、

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