「丹下左膳」 コレはドロドロ愛欲劇だ!

 「時代劇入門」のエントリーで

「ワタクシ禁煙さんが時代劇に目覚める前、あまつさえ生まれる前の映画まで遡って観るかというとですね、観ません。」

などと言ってしまったが、たまたま時代劇専門チャンネルでヤッていたので観てみました。

 丹下左膳は「時代劇入門」でも「とりあえず知っておきたい時代劇ヒーロー30」の一人であり、主役の大河内傳次郎も「とりあえず知っておきたいスター30」のひとりである。
 つまり、時代劇映画として充分にメジャーな作品である筈である。

 しかし一方で本作はやや複雑な立ち位置な映画でもある。
 本作は1953年、つまりは戦後の制作だが、実は大河内傳次郎主演の丹下左膳映画は、戦前から人気で既に何本も作られているのである。
 そしてそれら戦前の作品は、恐らくは我々の考える丹下左膳のイメージと一致している。
 長屋に住む浪人者で、近所の子供に懐かれて困っているが、一旦事あらば片手でバッタバッタとヒトを斬る、みたいな、、、

 しかし本作は一旦、林不忘の原作に立ち戻って、本来のニヒルな丹下左膳を描き直そう、という試みであるらしい。
 つまり今で言えばリブートしてみました、ということだろう。
 なにしろオープニングの時点では東北の某藩で普通の一藩士である。
 ただしこの時点で既に片目片腕。
 異形感はスゴい。

 東北の饗庭藩。
 自ら「刀狂い槍狂い」と称する藩主は城内の一室を自分の刀剣コレクションに充てるほどのコレクター。
 しかし江戸の道場主が持つ「関の孫六」作の名刀だけがいくら頼んでも金を積んでも手に入らない。藩士たちを集めて
「誰か手に入れてくれるものはおらんか!!」
と獅子吼したところ、
「イヤ、コレもう無理じゃね、、、」
と下を向く藩士たちを尻目に唯一手を上げたのが隻眼隻手の藩士、丹下左膳だった、、、
というハナシ。

 一体全体左膳はどうやって名刀を手に入れるのだろう、、、と思っていると、なんと、イキナリ道場破りでした。
 まさかイキナリ暴力とは、、、
 ある日突然道場に現れ門弟どもを左手一本でバッタバッタとなぎ倒し、道場奥に飾ってあった名刀のうち大刀を奪い取ってしまう。
 なぜとりあえず大刀のみ手にとってしまったかと言うと、それでさらに道場のヒトたちを切り捨てるため。この時、道場主も斬られて寝込んでしまう。
 つまり、この映画での丹下左膳はとんでもない悪役なのである。
 しかも異形。
 しかも大河内傳次郎。
 もう、とんでもないことになってます。

 そしてとりあえず大刀のみを奪い取った左膳であったが、対になる小刀の奪取には失敗していしまう。なぜなら小刀は道場に駆けつけてきた道場主の娘、弥生によって守られるから。
 なんと、異形のオトコ丹下左膳、弥生に一目惚れしてしまい、弥生を切り捨てて小刀を奪えなくなってしまうのである。
 え、ココに来て色恋沙汰?、、、
 と思うのだが、実はこの映画、色恋沙汰が重要なテーマでもある。

 左膳は道場主の娘弥生に惚れている。
 しかしその弥生は道場の高弟、栄三郎に惚れている。
 しかしその栄三郎は茶屋の娘お艶に惚れている。
 ココはお艶も栄三郎に惚れていて、一応両思いなのだが、コレまた異形の不良旗本、鈴木源十郎なる人物が、お艶に横恋慕している。
 そしてそして左膳には、左膳が勝手に住み着いた古寺で賭場を開いている櫛巻お藤が惚れている。

 もう、ドロドロではないか。

 そして、ワタクシ禁煙さんは現時点でマキノ雅弘監督がナニを得意としているヒトなのか解らないのだが、なんとなく、演出で一番力が入っているのは、栄三郎をめぐる二人のオンナ、弥生とお艶が対面してしまう愁嘆場のような気がする。

 そう、何しろ「丹下左膳」なので、最初の道場破りのシーンを皮切りに当然チャンバラはふんだんにあるのである。
 しかし、本作を観て
「おお、大河内傳次郎の殺陣スゲぇ!」
となるかというと、ならないのね。
 太刀筋をジャンプで避けたり、結構アクションしているのだが、ロングショットが多いせいもあって、あまり迫力がない、というか、そもそもナニをヤッているのかよく解らない。

 さらに言えば、このストーリーのもう一つの特徴は、

「大小二振りの名刀同士が血を吸いながら呼び合う」

という伝奇趣味である。
 左膳の手にある大刀と弥生から栄三郎に託された小刀が、再び一緒になるためには100人の血を吸わなければならず、左膳は大刀が求めるまま、夜な夜な辻斬りを繰り返す。

 こういう伝奇要素が入ると、ストーリー全体が支配されがちだが、あんまりそこに重点が置かれてる気がしない。
 やはり重点が置かれているのは色恋沙汰なのだ。
 誰が誰をどれだけ好きなのか、そしてそれによってどういう行動を取るのか、そこを延々と描いている映画、という印象が深い。
 やっぱりマキノ雅弘監督の興味はそっちにあるのかな、という感じ。

 もっと大河内傳次郎演ずる異形のオトコっぷりを楽しめるかな、と思ったがちょっと残念。

 そしてこの映画、ラストで大量の捕り方に囲まれた状態での左膳と栄三郎の対決の最中、唐突に終わってしまう。
 なんじゃコリャ、と思うが、どうもこの映画、続編があり、二本で一本の映画らしい。
 そして、続編はDVDが出ているが、正編である本作はDVD化されていない。
 なにしろ主人公が隻腕隻手でである。今となっては映画に使ってはイケない単語がイロイロ出てくるせいだろう。
 逆に続編はその辺なんでうまく避けられているのか(あるいはいないのか)分からないが、とりあえずそのまま放送してくれた時代劇専門チャンネルに感謝を捧げて本稿を締めくくりたい。

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