「スマホを落としただけなのに」 全てがテレビサイズの中田秀夫

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 なんとなく、落としたスマホは戻ってこないんだろうなと思っていたが、意外にあっさり出てくる。ただし、データを全部抜かれたうえで。
 ここから、落とした本人(田中圭)のデータはおろか恋人(北川景子)のデータまで抜かれるわ、恋人の昔の知り合いのデータまでアクセスし放題、徐々に身辺に危険が迫ってくるまでの展開は、さすが腐っても中田秀夫、テンポもよくて「ほうほうほう」と興味を持って見ていられる。
 正直言って、スマホに頼り切りの生活を送っている現代人の恐怖のアーキタイプといっても良いようなネタだし。

 しかしですね、観ているうちになんかいろいろな要素が増えてきて、「え?コレどうやって終わるの?つか終われるの?」とすら思えてくる。

 スマホのデータを抜いてやりたい放題する天才ハッカーが実は連続殺人鬼だった、というのは悪くない。二つのアイデアが有機的に結びついている。
 しかし、ここからそーとートリッキーな北川景子の過去を持ち出してくるのはムリではないか。
 さらに若い刑事(千葉雄大)の幼少期の心的外傷まで絡めるに至っては、ただストーリーが混乱しているだけである。

 1.スマホ落とした問題と2.連続殺人問題と3.恋人の過去問題と4.刑事の生い立ち問題。
 この4つの問題を2時間の映画でこなすのは無理だ。
 ワンクールのテレビドラマなら4っつくらい必要かもしれないが、映画はむしろ一つ二つの要素をじっくり描いて膨らますべきなのだ。

 この映画だったら1.と2.を選択して3.と4.は潔く捨てるべき。
 っていうか4.はそもそもいらない。3.はもうちょっとうまくやれば1.と3.の組み合わせで映画もう一本作れるかも知れない。
 スマホを落としただけなのに、10年以上隠してきた過去の秘密がバレてしまう、なんておもしろそうでもある。

 ただし、今のままでは無理。
 北川景子は5年前に絶対にヒトに知られるわけにはいかない「ある秘密の決断」をしていて、その決断が田中圭との結婚を躊躇させる原因にも成っているのだが、我々観客には彼女が何故そんな決断をしたのか、理解できない。
 どう考えても本人にとって不利な選択なのである。
 「こんな選択をしたオンナがいたらおもしろいなぁ~」
と思うのは分かるが、観客にとって納得の行く理由を提示してくれないと、せっかく北川景子が良い芝居をしてもどうでも良くなってしまう。

 ワタクシ禁煙さんは「花のあと」の北川景子の凛とした美しさが好きだった。
 本作の北川景子はフツーの恋するOLとして登場するので、別に北川景子じゃなくてもいいかなぁ~という感じだったが、この、過去の選択における回想シーンと、それを語る北川景子を見ると、ああ、このための北川景子だったか、と思わせるだけに残念。

 要するに、もう、中田秀夫は「映画らしい映画を作る」のは諦めてしまったのだろう。
その事実を如実に示す演出がもう一箇所あった。

 映画の終盤、シーンが変わるとモニターが映っている。そこに、ベテラン刑事(原田泰造)に語りかける若い刑事(千葉雄大)の声。

 「犯人が最後にアクセスしたポイントはこの店です。防犯カメラに奴が映っているはずです」

 イヤイヤイヤイヤイヤ。
 それを今言うんなら、キミは一体全体どう言って先輩刑事をココまで連れてきて管理人に管理人室の鍵を開けてもらって防犯カメラのモニターのスイッチを入れてもらったのかと。
 当然、そもそも署を出る段階で先輩刑事にはどこに何をしに行くか伝えている筈ではないか。
 まさか、「まあまあまあ、センパイ、何も言わずにボクの行くところについてきてくださいよ、、、」とか言って連れ出した、とでも言うのだろうか、、、
 こういう演出はテレビドラマではよくある。
 テレビとは、「家事しながら」、「食事しながら」、「一家団欒しながら」などと「ながら見」される宿命を持つので、ある程度説明的なセリフを求められるフシがある。
 しかし。
 失礼ながらわたくし禁煙さんは映画でこの手の演出を見たのは初めてのような気がする。
 だったらどうすればいいのかと言えば、なにも説明しなければいいのだ。
 刑事が二人で防犯カメラの映像見ていれば犯人を探しているに決まっているではないか。
 洗練された映画は省略が効いているものである。

 中田秀夫は東大時代に蓮實重彦のゼミにいて、卒業後日活入社、ロマンポルノの巨匠小沼勝の助監督をしていた、という映画にどっぷり浸かった映画の坩堝から出てきたようなヒトという印象があった。
 そんな中田秀夫ではあったが、やはりテレビ資本で撮るとテレビサイズな演出になってしまうのか。
 映画を理解せず、貧乏性なテレビ局のプロデューサーから「もっと分かりやすく!」とか「もっと盛りだくさんに!」とか言われてそれに従わざるを得ないのだろうか。
 それとも中田秀夫自身どうでも良くなってしまったのだろうか。

 もう一度、ホラーじゃなくてもいいから中田秀夫の映画らしい映画を観たいと望むワタクシ禁煙さんであった、、、

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