
「日本映画講義 時代劇編」のせいでチャンバラづいてる。
同書で扱われている映画監督中でやや苦手な五社英雄作品。
タイミングよく時代劇専門チャンネルでやっていたの観てみました。
五社英雄が苦手なのは、昔「雲霧仁左衛門」、「闇狩人」「十手舞」(W)などを観たときに、「ああ、このヒト、チャンバラが好きじゃないんだな、、、」と思ったから。
しかし、世の中では五社英雄はチャンバラ描写においてもそれなりに評価されているように思える。
なにしろ出発点からしてテレビ時代劇の「三匹の侍」である。
この時の殺陣にかんして、Wikipediaでは
>刀と刀がぶつかる金属音や、刀を振った時の風の音、人が斬られる時の肉が裂ける音が付けられた。
>映画のようなカメラワークやロケが望めないテレビ時代劇において迫力のある立ち回りを演出するため工夫されたこうした「効果音」の演出は、
>五社が初めて時代劇で編み出したものであった。
となっている。
う~ん、、、
微妙、、、
コレは殺陣にまつわる「効果音」のハナシであって、殺陣の動きそのものではない。
イキナリ結論めいたことを言ってしまうと、おそらく、刀を使ったアクションには興味があり、そのリアリティや迫力を追求するのには熱心だったが、いわゆる殺陣の美しさや「チャンバラ」の面白さには興味がなかったのではなかろうか。
ココは微妙な違いだが、ワタクシ禁煙さんにとってはとても重要だったりする。
で、「御用金」ですが。
まず、ストーリーの面白さに感心する。
「御用金」というタイトルから、恐らくは幕府の御用金を盗もうとする側と守ろうとする側の戦いになるのではないか、という予想はあっという間に裏切られる。
ファーストシーンは、5年ぶりに奉公先から海辺の村に戻ってきた娘が、村が完全に無人になっていることを知る、という、はなはだ不穏なもの。
クドい位のカラスの使い方がイヤが上にも不安をかき立てるが、「御用金」となんの関係があるのかはサッパリ分からない。
「ああ、この映画の展開はは通り一遍のありがちなものじゃないぞ」
と思わせるに充分なオープニング。
原作のない映画オリジナルの脚本としては画期的、というか、映画というものがまだなにかのサブジャンルに堕ちる前、娯楽の王様だった時代の残滓を感じさせるではないか(ちょっと大げさかな、、、)。
ちなみにこのストーリーは町山氏の言う通りその後の角川映画「野性の証明」の元ネタだろう。
「野性の証明」はもともと森村誠一氏が角川春樹に請われて映画用に考えたストーリーで、「御用金」のほぼ10年後である。森村誠一氏はマジメな性格なので、もしかすると角川春樹の入れ知恵かな、という気もしないでもない(勝手なこと言ってますが)。
その後のストーリーでも大きな役割を果たす唯一の生き残りの村娘に浅丘ルリ子。
前にも書いたがワタクシ禁煙さんが物心ついた頃にはお浅丘ルリ子と言えば「やたら頬骨の出たキツそうなオバハン」になっていたが、昔のアキラ映画を見るとこの世のものとも思われないほど可愛さ、まさに人間界に迷い込んだ妖精かと思うほどの可憐さだが、この頃はちょうどその中間点、妖精からキツそうなオバハンへの過渡期であり、ちゃあんと「可憐なキツそうなオバハン」の役になっている。
その後の主人公の仲代達矢の登場シーンに至っても、御用金がどう絡んでくるのか全くわからない。
さらに言えばこの「剣豪が三味線を弾く女芸人と組んで大道芸をしている」という設定は、「必殺仕業人」の中村敦夫のモデルだろう。
イロイロなところに影響を与えている映画なのだな、と思う。
この三味線弾きの女の狂的なノリと、この女の裾を開いてむき出しの膝の上に載せた魚を居合で切ってみせる、という趣向が、いかにもエロとグロでならした五社英雄演出の面目躍如。
このあとも徐々に真相を小出しにしつつ、仲代達矢が江戸から鯖井藩(越前鯖井藩をモデルにした架空の藩)まで旅をする過程でイロイロ起こる展開が巧い。
五社英雄と田坂啓の脚本だがどっちのストーリーなんだろる、、、
普通こういうときは脚本が本業のヒトのオリジナルストーリーで監督は自分の作品用に脚色している場合が多いものだが、このあと五社英雄は原作付きの脚本が多くなるので、やはりストーリーは田坂啓なのだろう。
そして雪の鯖井(ロケ地は下北半島)に近づくにつれ、画面の美しさにも目を奪われる。
ラストの夜の岬で櫓がボンボン燃え盛るなかでの活劇など、炎の照明だけで撮っているのかと思わせる臨場感あふれる、それでいて陰影の深い映像など、なんだかそれだけでドキドキする。
で、肝心のチャンバラですが、、、
せっかくもうひとり剣豪役で萬屋錦ちゃんまで呼んでいるんだが、どうも殺陣の魅力に訴える演出に乏しい。
迫力のある活劇では有るんだが、チャンバラとしては面白くない。
コレが五社英雄なのだろう。
あとコレはあくまでワタクシ禁煙さんの感想だが、主役が仲代達矢と言うのが、映画としての魅力に乏しい。 なんかもう、辛気臭いだけで、その魅力で映画一本支える、というタイプじゃない気がする。
このハナシも何度も書いている気がするが、俳優さんには人気のあるマネーメイキングスターと演技のうまいアクターがいる。
マネーメイキングスターはクリント・イーストウッドやジャッキー・チェンの様に何を演ってもクリ様、何を演ってもジャッキー、が許されるが、アクターはいつもその役にふさわしい演技をしなければならない。
仲代達矢はアクターのくせに何を演っても仲代達矢、という気がする。
五社英雄はこのあと何本も時代劇を作るが、やがて宮尾登美子三部作のような「女の情念」を描く映画にシフトしていく。
やっぱりそっちが本領だったんだろうな、と思うワタクシ禁煙さんであった。
ところでこの映画、国内版のDVDがなく、Amazonにはアメリカ版しかない(その名も「GOYOKIN」)。
リージョンコードが違うので、国内用のDVDプレーヤーでは再生できません
どうなってんの東宝さん。



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